新疆ウイグル自治区人権問題

以前より問題となっていたウイグル問題について一昨日、国連の特別報告者である小保方智也氏が自身のツイッターで「新疆ウイグル自治区の民族および宗教的な少数者に対する強制労働があったと判断するのは合理的だ」とする報告書を発表しました。

このウイグル問題とは、中国政府が新疆ウイグル自治区でイスラム教徒が大部分を占める少数民族ウイグル族を収容施設に収容し、民族迫害をしているというもの。

2018年頃から欧米のメディアで報じられるようになってから、問題視されていたものの、これまでの間“頑固たる証拠はない”と中国側の否定もあり決定的な証拠が掴めないままでいましたが、今回の報告書で、NGOやシンクタンクの報告書、被害者の証言に基づいて、新疆ウイグル自治区の民族および宗教的な少数者に対する過酷な労働状況を指摘。同自治区の民族および宗教的な少数者を収容している職業訓練施設での虐待的な生活や過度な監視について言及し、「強制労働が行われていると結論付けるのは妥当と考える」と表明しました。

では、なぜこのウイグル問題が欧米のメディアで取り上げられることになったのか。
その背景の1つに、欧米と中国による綿花問題が深く関わっていると言われています。

コロナが世界的に流行する前。世界の綿花生産量トップ3は、1位が中国(604万トン)、2位がインド(535万トン)、3位がアメリカ(400万トン)で、中国は全世界の生産量(2574万トン)の23%を占めていました。その中国生産分の中でも約85%を占めていたのが、新疆綿。いわゆる新疆ウイグル自治区で生産されていた綿花なんです。

この新疆綿は、繊維長が長い「超長繊維綿」といわれる綿で、滑らかさや光沢感があるのが特徴ですので、中国のみならず日本、アメリカ、ヨーロッパなど世界各国の衣料品に使われていました。

そんな世界の綿生産量の約20%を占める新疆綿に目を付けたのがアメリカです。
アメリカはウイグル自治区で起きている民族人権侵害問題を摘発することで、必然的に新疆綿の消費率を下げ、アメリカ産の綿の需要をもっと上げていく仕組みを作りあげようとしたんです。

実際に、欧米メディアによる報道により約1年前からナイキ、ヘネス・アンド・ マウリッツ(H&M)グループやグンゼ、ユナイテッドアローズ、三陽商会など様々な大手アパレル企業が新疆綿の使用を中止する方針を発表をしました。

そんな一連の流れを見て私は、これから綿を原料とした衣料品の生産が世界的に低迷していくのではないかと思っています。

それはなぜか。
1つは、中国で生産される衣服の大半に新疆綿が使われているためです。
現実問題、中国生産に頼る多くのアパレル企業がこの新疆綿を使わないとなると、かなりのダメージになります。
実際、中国側では新疆綿を使わなければ、今後一切、中国生産のものに頼るな、という話も出ているという。(流石にそこまでならないかと思いますが。)
こうなってしまうと、衣料品の約7割を中国生産に依存する特に日本は難しい局面に立たされることになることでしょう。

もう1つは、世界各国のブランドがサステナブル思考になっているからです。
新疆綿は問題視されているものの、オーガニックコットンで高品質でありながら、比較的安価、また生産は非常に近代化しておりアメリカの大規模農場の2倍の生産効率を誇っています。
一方アメリカはというと、綿花栽培では同じ面積当たりの収穫量が中国の半分しかなく、また安く作る経済合理性を優先していることで、オーガニックコットンをほぼ作ってきていません。
上記で多くのアパレル企業が新疆綿を使用しない方針を発表していると伝えましたが、その多くはサステナビリティを重視し、実際に綿花原料のサステナビリティの実質的な世界標準になっている認証団体に加盟しているブランドです。
そんな中アメリカの今の綿花産業というのは、サステナビリティが求められる時代でのオーガニックコットンの競争力が非常に低下しているんです。

では、どうすれば中国産綿花(新疆綿、オーガニックコットン)に頼らず、コットン衣料品を生産し続けていけるか。

それは、宣戦布告ともいえる行動をとったアメリカの綿花産業をもっと巨大化することです。
(その他の国でも綿花の生産が進んでいるところもありますので一緒に成長していくことがベストです。)
しかし、これが簡単に出来れば苦労はしません。非常に難しい問題かと思います。
除草剤耐性、土壌侵食、地域の灌漑用水不足などの生産の持続可能に必要な様々課題に直面しています。

個人的には、新疆綿は問題視されているものの、ほとんどは真面目に努力をして生産された新疆綿に違いないと思いますので、一部の報道されている虐待的な強制労働問題を解決し、このままこの近代化し生産効率にも優れている新疆綿は残していく方針を検討すべきなのではないかと思います。(もちろん簡単な問題ではないことは重々承知しております。)

一番はウイグル自治区の問題を解決し、そのうえで新疆綿を存続させることですが、なかなかそれが厳しいようですので、今はアメリカをはじめ世界の綿花産業の発展を期待する限りです。

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